「求人を出しても歯科衛生士の応募が来ない」「面接までは進むのに採用が決まらない」という状態は、求人票を書き直すだけでは変わりません。
歯科衛生士が採用できない理由は、応募が来ない段階、面接しても決まらない段階、入っても続かない段階のどこで止まっているかで対策が変わります。
この記事では、止まっている段階の見分け方と、応募が来ない医院の共通点を説明します。
給与以外に出せる条件、歯科助手に任せられる仕事の分け方、採用方法の比べ方もまとめました。
数字は厚生労働省と公益社団法人日本歯科衛生士会の公表資料をもとにしており、本記事は2026年10月時点の情報です。
Webマーケティング支援を行う株式会社青春貢献が、歯科医院の採用をお手伝いしてきた現場の内容を加えてまとめました。
アパレルEC運営、WEB広告代理店でのSNSディレクター経験を経て、2024年に青春貢献へ入社。SNS運用やインフルエンサー施策に加え、営業・人事・マネジメントまで幅広く担い、2025年4月より取締役に就任。
現場と経営の両視点を持つマーケターとして、次世代マーケティング戦略設計、ブランディング構築、SNS運用戦略を得意とする。SNSエキスパート検定上級保持。
歯科衛生士が採用できない理由は3つの段階に分かれる
歯科衛生士が採用できない理由は、応募が来ない段階、面接で決まらない段階、入っても続かない段階の3つに分かれます。
どの段階で止まっているかを決めないまま求人票や給与を直しても、状況は変わりません。
応募・面接・定着のどこで止まっているかを5つの数字で確認する
止まっている段階は、直近3か月の5つの数字を数えるだけで分かります。
- 応募数(求人媒体・ハローワーク・採用ページの合計)
- 面接した人数
- 内定を出した人数
- 入職した人数
- 入職から3か月後に残っている人数
応募数が月0〜1件の医院は、応募が来ない段階です。
応募数が月2件以上あるのに面接した人数が半分以下の医院は、面接で決まらない段階です。
入職した人はいるのに3か月後に残っていない医院は、入っても続かない段階です。
応募そのものが集まらない場合の対策は、募集しても人が来ない原因と対策で詳しく扱っています。
歯科衛生士の求人倍率は2.78倍で全職業の2倍を超える
厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagの歯科衛生士のページによると、歯科衛生士の求人倍率は2.78倍(令和7年度・全国)です。
ハローワークに登録した歯科衛生士1人に対して求人が2.78件ある状態です。
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分)(2026年)では、全職業の求人倍率は1.18倍(季節調整値)です。
歯科衛生士の求人倍率は全職業の2倍を超え、働く人が複数の医院を同時に比べられる状態だと言えます。
1施設あたりの歯科衛生士は約2.0人で常勤1名の上積みは難しい
厚生労働省の「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(2025年)では、診療所に勤務する歯科衛生士は135,499人です。
厚生労働省の「令和6年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(2025年)では、歯科診療所は66,378施設です。
135,499人を66,378施設で割ると、1施設あたり約2.0人になります。
常勤を1名増やすことは、全国の平均を上回る人数をそろえる採用にあたります。
歯科衛生士の応募が来ない医院に共通する3つのこと
歯科衛生士の応募が来ない医院には、求人票に働き方の数字がない、募集を出す場所が1か所だけ、採用ページに働く人の情報がないという3つの共通点があります。
Webマーケティング支援を行う株式会社青春貢献が歯科医院の採用をお手伝いしてきた現場でも、この3つが重なっている医院が目立ちます。
求人票に残業・休憩・有給の数字が書かれていない
応募が来ない求人票には、働き方を示す数字が入っていません。
公益社団法人日本歯科衛生士会の「歯科衛生士の勤務実態調査報告書(第10回、2025年3月)」によると、転職の理由の上位は4つです。
「出産・育児」「結婚」「給与・待遇面」「勤務形態・勤務時間」が並びます。
この調査は会員15,177人を対象に行われ、5,385人(回収率35.5%)が答えたものです。
転職の理由の上位4つは、求職者が求人票で最初に探す項目と重なります。
ところが求人票の多くは「残業少なめ」という言葉で止まっています。
「残業少なめ」を「残業は月平均3時間(2025年度実績)」に書き換えるだけで、求職者が比べられる情報になります。
有給を昨年度に何人が何日取ったか、産休・育休から何人戻ったかも数字で書きます。
募集を出す場所が1か所だけになっている
応募が来ない医院のもう1つの共通点は、募集を出している場所の少なさです。
求人倍率が2.78倍(令和7年度・全国)の状態では、1か所に掲載して待つだけでは求職者の目に触れません。
募集の入口は、ハローワーク、求人媒体、歯科衛生士の学校、採用ページ、SNS、スタッフの紹介の6つです。
自院でいくつ動いているかを数えてください。
募集先が1か所の医院は、費用のかからないハローワークと学校、スタッフの紹介の3つを同時に動かす形が負担の小さい進め方です。
ハローワークへの求人の申し込みは、厚生労働省が運営するハローワークインターネットサービスから行えます。
どの媒体から応募が来やすいかは、歯科医院の求人SNS効果を検証した記事で媒体別に整理しています。
採用ページとSNSに働く人の情報がない
採用ページとSNSは、求人票では伝わらない「誰と働くか」を面接の前に見せる手段です。
歯科衛生士は、ユニットの台数や1人の患者にかける時間を自分の目で確かめてから応募を決めたいと考えます。
投稿が症例写真と院内設備ばかりのアカウントでは、働き方を判断する材料が渡せません。
見学だけを申し込める入口を置き、最初の返信を当日中に返す形にすると、応募前の離脱が減ります。
症例写真を採用アカウントで使う場合は、厚生労働省の「医療法における病院等の広告規制について」で示された体験談とビフォーアフター写真の扱いに注意が必要です。
歯科医院のInstagram採用の進め方は、歯科医院のInstagram採用事例で紹介しています。
歯科衛生士が採用できない医院が見直す条件と定着の3点
歯科衛生士が採用できない医院が見直す点は、給与の水準、給与以外に出せる条件、入職後3か月に教える内容の3つです。
給与だけで競うのではなく、働き方という条件を組み合わせて決めます。
給与は月26.2万円が比べられる基準になる
job tagによると、歯科衛生士のハローワーク求人の給与は月額26.2万円(令和7年度・全国、前年度より0.7万円増)で、令和8年6月時点では26.7万円です。
自院の提示額が26万円台を下回ると、求人票の段階で比べてもらえないおそれがあります。
job tagが令和7年賃金構造基本統計調査をもとに集計した歯科衛生士の年収は396万円、平均年齢は36.4歳です。
1時間あたりの賃金は、一般労働者が1,976円、短時間労働者が2,014円です。
賞与と残業代を含まない短時間労働者の2,014円が、それらを含む一般労働者の1,976円を上回っています。
時短勤務の求人を出すときは、時給を常勤の時間あたりの金額より低くしないことが前提です。
給与以外に出せる8つの条件から2〜3つを選ぶ
給与を上げる以外にも、歯科衛生士に魅力として伝わる条件があります。
| 出せる条件 | 医院側の負担 | 伝わること |
|---|---|---|
| 基本給を上げる | 固定費が毎月増える | 最も分かりやすい |
| 資格手当・担当手当 | 対象者だけ増額 | 評価の基準が見える |
| 時短勤務(6時間) | シフトを組み直す | 子育て中の人に届く |
| 曜日固定・土曜隔週 | 土曜の人員を調整 | 家庭の予定が立つ |
| 週2〜3日・扶養内 | 教える相手が増える | 復職したい人に届く |
| 残業をなくす運用 | 片付けの分担を決める | 実際の数字で示せる |
| 有給の取得実績を出す | 取得状況の記録が必要 | 制度が使えると伝わる |
| 研修費を医院が負担 | 年間数万円から | 学びたい人に届く |
条件はすべて用意する必要はありません。
自院で負担なく出せるものを2〜3つ選び、求人票と採用ページの両方に数字で書くことが優先されます。
費用の全体像は、歯科医院の採用ブランディング費用と相場で整理しています。
入職後3か月に教える内容を入職前に文書で渡す
歯科衛生士が長く働く医院は、入職後3か月に教える内容、担当する患者の数、昇給の基準の3つを入職前に文書で渡しています。
- 1週目:院内の動き方、器具の置き場所、記録システムの操作を誰が教えるか
- 1か月目:どの処置から任せるか、歯科医師の確認をどこで入れるか
- 2か月目:担当するリコール患者を何人から始めるか
- 3か月目:1人で任せる範囲をどこまで広げるか
教える担当者が決まっていない医院では、入った人が質問する相手を探すところから始めることになります。
昇給と評価の基準は、院長のそのときの判断ではなく、書いたものに置き換えます。
医療勤務環境改善支援センターとは、医療機関の労務管理と働く環境の改善を無料で相談できる公的な窓口です。
各都道府県の窓口は、厚生労働省のいきいき働く医療機関サポートWebから確認できます。
若手の応募数と定着を同時に上げる進め方は、若手採用で応募増と定着率を上げる方法でまとめています。
歯科衛生士が採用できないときの対策と採用方法の比べ方
歯科衛生士が採用できない期間を乗り切る対策は、仕事の振り分けを見直す、常勤1名の枠を2名に分ける、採用方法を費用と期間で比べ直すの3つです。
常勤1名の採用を待つ前に、必要な人数そのものを減らせます。
歯科助手に任せられる仕事を移して必要な人数を減らす
歯科衛生士の仕事は法律で3つ決まっており、その外側の仕事は歯科助手や受付スタッフに任せられます。
公益社団法人日本歯科衛生士会は、歯科衛生士法で決められた仕事として、歯科予防処置、歯科診療の補助、歯科保健指導の3つを挙げています。
一方でjob tagの歯科衛生士のページでは、「歯科診療所で、受付や精算、診療報酬の請求事務をする」が78.9%と示されています。
資格のいらない事務を約8割の歯科衛生士が担っている状態です。
受付・精算・請求事務は受付スタッフへ、器具の洗浄・滅菌、カルテ入力、物品の発注は歯科助手へ移せます。
歯科助手は資格のいらない職種なので、歯石を取ることやフッ化物を塗ることは任せられません。
自院の分担を変えるときは、管轄の保健所か都道府県の歯科医師会に確かめてから進めてください。
歯科医師向けの関係法規や都道府県歯科医師会の情報は、日本歯科医師会から確認できます。
常勤1名の募集を時短と週2〜3日の2名に分ける
常勤1名の枠は、時短勤務と週2〜3日勤務の2名に分けられます。
job tagの歯科衛生士のページでは、働き方として正規の職員・従業員が76.4%、パートタイマーが41.8%と示されています。
パートタイマーでの就業が4割を超える職種であり、週2〜3日の募集は市場から外れた条件ではありません。
分けるときは、2名のシフトが重なる曜日を1日つくり、情報を共有する時間を確保します。
潜在歯科衛生士とは、歯科衛生士の免許を持ちながら歯科衛生士として働いていない人です。
復職したい人に向けた求人票では、現場を離れていた期間がある前提の研修期間と、1日の勤務時間の下限を書きます。
採用方法6つの費用と期間を比べる
歯科衛生士の採用方法は、始めるときの費用、採用時の費用、採用までの期間で違いが出ます。
| 方法 | 始める費用 | 採用時の費用 | 期間 | 向く状況 |
|---|---|---|---|---|
| 求人媒体 | 掲載費 | なし | 1〜3か月 | すぐ始めたい |
| 人材紹介 | なし | 手数料 | 1〜2か月 | 急ぎで必要 |
| ハローワーク | なし | なし | 2〜6か月 | 費用を抑えたい |
| スタッフの紹介 | なし | 紹介手当 | 不定 | 今いる人が定着 |
| SNS・採用ページ | 制作費 | なし | 3〜6か月 | 時間をかけて整える |
| 学校ルート | 実習受け入れの手間 | なし | 6〜18か月 | 毎年採用したい |
人材紹介の手数料は法律で決まった基準がなく、紹介会社ごとに金額の決め方が違います。
依頼する前に、手数料の割合と、早期に退職した場合の返金の条件を書面で確認してください。
学校ルートは、歯科衛生士の学校に求人票を送り、実習を受け入れ、見学会を開く方法です。
学校に通う年数は3年以上のため、つながりをつくってから採用までに6か月から18か月かかります。
厚生労働省の「歯科衛生士国家試験の施行」では、受験資格は文部科学大臣が指定した歯科衛生士学校、または都道府県知事が指定した歯科衛生士養成所の卒業者(卒業見込みを含む)と示されています。
第36回の試験期日は令和9年3月7日で、卒業年次の採用は3月の試験日程に合わせて準備します。
外注先の選び方は、歯科医院のSNS採用代行の選び方を参考にしてください。
歯科医院が歯科衛生士を採用できないときのよくある質問
歯科医院の院長から多い質問は、応募が来ないときに何から直すか、給与を上げるべきか、常勤が採れないときにどう回すかの3つです。
Q. 歯科衛生士の応募が1件も来ません。最初に何を直せばよいですか
A. 求人票に働き方の数字を入れる作業と、募集を出す場所を増やす作業の2つから着手します。
残業の実際の時間、休憩の取り方、有給の取得実績、産休・育休から戻った人数を数字で書き換えてください。
そのうえで、ハローワークと歯科衛生士の学校、今いるスタッフの紹介の3つを同時に動かすと、費用をかけずに募集の入口を増やせます。
Q. 給与を近隣より高くすれば歯科衛生士は採用できますか
A. 給与を上げることは求人票で比べられるときに有利に働きます。
ただし止まっている段階が面接や定着にある医院では、採用が決まる結果につながりにくいです。
自院の提示額が月26万円台(令和7年度・全国の求人給与)を下回るなら、上げることを考えたほうがよいです。
同じ水準を満たしているなら、面接の日程の決め方と内定後の連絡を先に見直す順番をおすすめします。
Q. 常勤が採れないとき、時短や週2〜3日の採用でも診療は回りますか
A. 2名のシフトが重なる曜日を1日つくり、情報を共有する時間を確保する形であれば運用できます。
job tagでは、歯科衛生士の働き方としてパートタイマーが41.8%を占め、週2〜3日の募集は市場から外れた条件ではありません。
ただし教える相手が2名になるため、入職したときに教える手間は常勤1名より増えます。
時短勤務の時給は、常勤の時間あたりの金額より低く設定しない前提が必要です。
今日できることを1つ選ぶなら、直近3か月の5つの数字を数え、止まっている段階を1つに絞る作業です。
株式会社青春貢献では、採用がどの段階で止まっているかを整理したうえで、採用ページとSNS発信、公式LINEを組み合わせた採用の設計から運用までをお手伝いしています。
自院で歯科衛生士が採用できない理由を一緒に切り分けたい方は、お問い合わせからご相談ください。






