月10万円の広告費で、何件の予約が入れば「効果があった」といえるでしょうか。
5件では少なく、10件なら十分なのか。その答えは、診療内容や実際に来院した人数によって変わります。歯科のリスティング広告を検討する際は、費用相場に加えて、自院で採算が合うかを見極めることが大切です。
では、広告はクリックされているのに予約が増えないとき、何から見直せばよいのでしょうか。
予算を増やす前に知っておきたい費用の考え方と、予約につなげるためのポイントを、具体的なシミュレーションとともに確認していきましょう。
アパレルEC運営、WEB広告代理店でのSNSディレクター経験を経て、2024年に青春貢献へ入社。SNS運用やインフルエンサー施策に加え、営業・人事・マネジメントまで幅広く担い、2025年4月より取締役に就任。
現場と経営の両視点を持つマーケターとして、次世代マーケティング戦略設計、ブランディング構築、SNS運用戦略を得意とする。SNSエキスパート検定上級保持。
歯科のリスティング広告は効果がある?

歯科のリスティング広告は、通院先を探している人に自院を知ってもらい、予約につなげる方法の一つです。
成果を目指すには、患者さんが探す診療内容と広告を合わせ、迷わず予約できる状態を整えることが大切です。
リスティング広告の仕組みとSEO・MEOとの違い
リスティング広告は、「〇〇駅 歯医者」などの検索に合わせて、検索結果の広告枠に医院の情報を表示する仕組みです。
通常は、広告がクリックされると費用が発生します。
SEO・MEOとの違いは、情報が表示される場所と、見つけてもらうための方法にあります。
| 施策 | 主な表示場所 | 取り組み |
|---|---|---|
| リスティング広告 | 検索結果の広告枠 | キーワードや予算を決めて広告を配信する |
| SEO | 広告以外の検索結果 | 診療案内などの内容やホームページの使いやすさを整える |
| MEO | Googleマップや地図付きの検索結果 | 医院の住所・診療時間・写真などの情報を整える |
SEOはホームページ、MEOは地図上の医院情報を通じて、検索した人に見つけてもらいやすくする取り組みです。
広告を活用しながら、ホームページや地図の情報も充実させましょう。
地図上の医院情報の整え方は、歯科医院のGoogleビジネスプロフィール活用法でも解説しています。
なお、広告の出稿自体で、通常の検索順位が上がることはありません。
効果が期待できる医院と、導入前に整えたい予約体制
広告を検討しやすいのは、開業直後で医院を知ってもらいたい場合や、新患を受け入れる予約枠がある場合です。
地域で求められている診療と、自院で対応できる内容が合っているかも確認しましょう。
たとえば、土曜診療を探す人に広告を届けても、土曜日に予約が取れなければ受診につながりにくくなります。配信前に、次の3点を確認してください。
- スマートフォンから予約ボタンを見つけ、入力を完了できる
- 電話を受ける担当者と対応時間が決まっている
- 広告で案内する診療の予約枠を確保できている
患者さんの立場で予約の手順を一度試すと、分かりにくい箇所や入力しづらい項目を見つけやすくなります。
歯科のリスティング広告の費用相場と予算の決め方

広告予算を考えるときは、広告を配信する費用に加え、運用を任せる費用やページ制作費も確認しましょう。
「毎月かかる費用」と「開始時にかかる費用」を分けると、必要な総額を把握しやすくなります。
広告費・運用代行費・LP制作費の目安
広告費は自院で予算を設定できます。必要な金額は、地域や診療内容、競合の状況などによって変わります。
主な費用は、次の3つです。LP(ランディングページ)は、広告をクリックした人が最初に見るページを指します。
| 費用 | 主な内容 | 公開料金・予算目安の例 |
|---|---|---|
| 広告費 | Googleなどへ支払う配信費用 | 月5万円からのプランや、月10〜30万円を目安とするサービス |
| 運用代行費 | 広告の設定・分析・改善を任せる費用 | 広告費の20%など。最低料金を設ける会社もある |
| LP制作費 | 広告のリンク先となるページの制作費 | 1ページ50万円〜(税別)の例 |
上記は歯科向けサービスの公開料金例です。全国共通の相場ではなく、会社や依頼内容によって異なります。
税込・税別や最低料金も、見積書で確認してください。
例えば、広告費10万円に手数料20%だけが加わる契約なら、合計は12万円(税別)です。
初期設定費や制作費は別に確認しましょう。既存の診療ページを使える場合は、新しいLPが必要かどうかも検討できます。
予約1件あたりの費用(CPA)と採算の考え方
CPAは、成果1件を得るためにかかった広告費です。ここでは「予約完了」を成果とし、次の式で計算します。
予約CPA=広告費÷広告経由の予約完了数
広告費10万円で10件の予約が入れば、CPAは1万円です。手数料2万円も含めると、予約1件あたりの負担は1万2,000円になります。
電話ボタンを押しただけの件数を、予約完了数に含めないことも大切です。
実際の採算は、診療収入から材料費・技工料・人件費などと広告関連費用を差し引いて考えます。
保険診療と自費診療では収入や費用が異なるため、診療別に「予約1件に使える上限額」を決めましょう。キャンセルや、自費相談から治療に進む割合も考慮します。
月10万円の広告費を想定した予約数のシミュレーション
広告費を10万円使い、1クリックの費用が平均500円だったと仮定すると、クリック数は200回です。予約率は、広告のクリック数に対する予約完了数の割合を表します。
| 仮定した予約率 | 計算上の予約数 | 予約1件あたりの広告費 |
|---|---|---|
| 1% | 2件 | 5万円 |
| 3% | 6件 | 約1万6,667円 |
| 5% | 10件 | 1万円 |
※クリック単価と予約率は説明用の仮定です。実際の成果を保証する数値ではなく、手数料・制作費・消費税は含みません。
同じ広告費でも、予約率によって結果は変わります。
予算を増やす前に、診療ページの内容や予約のしやすさを見直すことも大切です。
予算は「目標予約数×想定CPA」で概算し、実績と予約枠を見ながら調整しましょう。想定CPAが1万円で月10件を目指すなら、広告費の試算は10万円です。
歯科のリスティング広告を予約につなげる3つのポイント
予約につなげるには、広告を見るところから申し込みを終えるまで、患者さんが迷わず進める流れをつくりましょう。
ここでは、「誰に届けるか」「どのページへ案内するか」「どう予約してもらうか」の3つに分けて説明します。
地域・診療内容に合わせてキーワードと配信範囲を決める
キーワードとは、どのような検索に広告を表示するかを決めるために設定する言葉です。
まずは、自院が対応できる診療内容と、地域名・駅名を組み合わせて考えましょう。
| 届けたい相手 | キーワードの例 |
|---|---|
| 近くの歯科医院を探している人 | 「〇〇駅 歯医者」 |
| 子どもの受診先を探している保護者 | 「〇〇市 小児歯科」 |
| 矯正治療の相談先を探している人 | 「〇〇駅 矯正歯科」 |
初めて出稿する場合は、まず力を入れたい診療内容を絞って考えると整理しやすくなります。
一般歯科と矯正歯科など、診療内容ごとに広告を分けておけば、どの広告に費用がかかり、予約が入っているかも確認しやすくなります。
配信範囲は、実際に通院してもらいやすい地域を基準に決めます。
Google広告では、地域や医院を中心とした半径などを指定できます。現在の患者さんの来院エリアや、電車・車での通いやすさも参考にしましょう。地域設定の精度には限界があるため、配信後も地域別の結果を確認します。
「求人」「転職」など、受診と関係のない検索語句は、広告を出さないための「除外キーワード」に設定します。
広告開始後は、実際に検索された言葉を確認して見直しましょう。
広告とリンク先ページの内容を一致させる
広告とリンク先のページでは、案内する診療内容や受付条件をそろえましょう。
例えば「小児歯科」を探す人には、お子さんの診療方針や初診の流れが分かるページへ案内します。
必要な情報をトップページから探し直す手間を減らすため、診療内容ごとのページを使う方法があります。
ページの上部には、対応する診療内容と予約方法を分かりやすく示してください。広告の内容と関連するページを選び、申し込み先を見つけやすくすることは、Googleも推奨しています。
広告で「土曜診療」を伝えるなら、リンク先にも土曜日の診療時間を記載します。
費用、担当する歯科医師、アクセスなども確認できるようにすると、患者さんが受診を検討するための情報がそろいます。
診療情報の発信も充実させたい場合は、コンテンツマーケティングで歯科集患を伸ばす方法と成功事例も参考にしてください。
スマホの予約導線と電話・Webの受付体制を整える
予約導線とは、ページを開いてから予約を完了するまでの流れです。スマートフォンで実際に操作し、次の点を確認しましょう。
- ページの表示に時間がかからず、文字が読みやすい
- 「Web予約」「電話する」のボタンが見つけやすく、押しやすい
- 予約フォームの入力項目が必要な内容に絞られている
- 希望する診療・日時を選び、申し込みを完了できる
Googleも、スマートフォンでの表示速度や、問い合わせ・操作のしやすさを重視するよう案内しています。
予約ボタンを押した後に別の予約サイトへ移動する場合も、迷わず進めるか確認してください。入力に誤りがあるときは、どの項目を直せばよいか分かる表示を用意しましょう。
電話番号の近くには受付時間を表示し、院内では電話を受ける担当者を決めます。
診療時間外にも申し込めるWeb予約を用意する場合は、送信時点で予約が確定するのか、医院からの連絡で確定するのかを明記しましょう。
仮予約を受け付ける仕組みなら、返信の目安も伝えます。
申し込みを確認する担当者と対応時間を決め、広告で案内した診療の予約枠を確保しておくことが大切です。
リスティング広告の効果が出ないときの改善方法
広告の成果が出ないときは、患者さんが予約・来院するまでのどこで止まっているのかを確認しましょう。
広告の配信設定だけでなく、リンク先ページや受付対応に改善点がある場合もあります。
電話タップ・予約完了・来院を分けて効果を測る
まずは、次の3つを分けて記録します。
- 電話タップ:スマートフォンで電話ボタンを押した回数。
- 予約完了:電話やWebで日時が確定した予約の件数。
- 来院:予約した患者さんが実際に受診した件数。
電話タップがあっても、通話や予約につながったとは限りません。また、Web予約が仮受付の場合は、予約の確定と区別しましょう。
広告管理画面の「コンバージョン(成果)」は、設定した行動をもとに集計されます。電話タップを成果に設定していれば、表示される件数は予約件数を表す数字ではありません。
広告経由と確認できた予約を台帳などと照らし合わせ、計測漏れや重複、キャンセル、実際の来院まで確認します。
来院予定日が先の予約は、まだ結果が出ていないものとして扱いましょう。
原因に応じて広告・ページ・受付対応を見直す
数字を分けて把握できたら、次のように確認する場所を絞ります。
クリック後の予約が少ない場合は、広告とページの内容の一致や、スマホでの操作性も確認しましょう。
| 状況 | 見直すポイント |
|---|---|
| 表示されてもクリックが少ない | 検索語句・配信地域・広告文が、来院してほしい患者さんに合っているか |
| クリックされても予約が少ない | 治療内容や費用が分かるか、予約フォームが使いやすいか |
| 電話タップに対して予約が少ない | 電話に対応できているか、案内できる予約枠があるか |
| 予約は入るが来院が少ない | 日時やアクセスが伝わっているか、キャンセル理由に共通点がないか |
いくつもの設定を一度に変えると、何が改善につながったのか分かりにくくなります。
優先する課題を決め、変更内容と日付を記録しながら、予約数や来院数の変化を確認しましょう。
歯科のリスティング広告で注意したい医療広告ガイドライン
医療広告ガイドラインは、患者さんが正しい情報をもとに医療機関や治療を選ぶためのルールです。
歯科のリスティング広告では、広告文とリンク先ページの両方を確認する必要があります。
広告文で避けるべき表現と、リンク先ページとのルールの違い
「絶対に治る」と効果を保証したり、「地域No.1の治療技術」と他院より優れていると示したりする表現は禁止されています。患者さんの主観に基づく、治療内容や効果についての体験談も、医院の広告には掲載できません。
また、広告文とリンク先ページでは、載せられる情報の範囲が異なります。
| 掲載場所 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 広告文 | 医院名・所在地・診療時間など、法令で認められた事項の範囲内で作成する |
| リンク先ページ | 一定の条件を満たせば、掲載できる情報の範囲を広げられる |
この範囲を広げる仕組みを「限定解除」といいます。
ただし、リスティング広告自体には適用されず、リンク先ページでも虚偽・誇大表現などの禁止事項は解除されません。
自由診療の費用・治療内容・主なリスクを適切に表示する
自由診療を紹介するページで限定解除の条件を満たすには、次の情報を分かりやすく示す必要があります。
- 治療内容と、標準的な治療期間・回数
- 通常かかる費用と、別途発生する費用の条件・金額
- その治療の主なリスク・副作用
- 電話番号などの問い合わせ先
費用は「○万円〜」という最低額だけで済ませず、総額の目安や内訳を示しましょう。
たとえば、検査代や装置代が別料金なら、その費用も明記します。リスクなどの説明も、別ページだけに載せたり、極端に小さな文字にしたりせず、治療を紹介するページ内で見つけやすく表示することが大切です。
なお、未承認の医薬品・医療機器を使用する場合は、承認状況などの追加説明も必要になります。
歯科のリスティングに関するよくある質問
Q.リスティング広告の効果はどのくらいの期間で判断できる?
A.判断する期間は一律ではなく、予約件数や来院までの時間によって変わります。
Googleの自動入札では、評価期間の一例として1か月が示されています。
予約件数が少ない場合は、判断に時間がかかることもあります。ただし、計測の不具合や、予約に関係のない検索への配信は早めに修正しましょう。
Q.広告運用は自院で行うべき?代理店に依頼すべき?
A.継続して確認・改善できる担当者がいるなら自院運用、時間や知識が不足しているなら外注を検討しましょう。
代理店を選ぶ際は、歯科での運用経験や医療広告の知識、対応範囲を確認します。費用を比較するときは、広告費と運用代行の手数料を分けて確認しましょう。
依頼する場合も、医院側から予約・来院の件数を共有し、一緒に改善できる体制を整えることが大切です。
広告を含む集患全体の支援を検討する場合は、歯科の集患コンサルの費用と選び方も確認しましょう。
Q.自院の医院名でも広告を出す必要がある?
A.すべての医院に必要なわけではありません。 自院名で検索した際の公式サイトや地図の表示状況、他院の広告の有無を確認して検討します。
広告を出す場合は、無料の検索結果からの流入も合わせて確認しましょう。
医院名では既存の患者さんが検索する場合もあるため、広告経由の予約数がそのまま新患数になるとは限りません。
医院全体の新患予約・来院数の変化も確認し、追加の広告費に見合うかを検討しましょう。


